ちょっと古い話だが、「こっこ」という女の子の話を3回に分けて載せる。
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こっこがつきあいを始めたのは大学1年のとき。夏休みに会ったときには、ほんとうに幸せそうにしていた。
相手は同じ大学の同級生。向こうは浪人したので、歳は―つ上だと言っていた。「今まで自分は何をしていたんだろうって思います。高校生の時だって、男の子とつきあったことはあるけど、そんなのとはぜんぜん違う。」
「一緒にいると、本当に安心なの。喧嘩もするけどね。」
本当に良く喧嘩をする二人だった。同学年で、学科まで同じということもあるけれど、何かと言えば口論し、大喧嘩をし、そしてすぐに仲直りした。
彼女はアパートに一人で住んでいた。彼もまた、大学の近くにアパートを借りていた。彼女は独身主義で、彼に限らず誰とも結婚するつもりはないと言っていた。「だったら、彼を絶対に自分の部屋に入れるな」と俺は言っていた。
大学生同士が本気でお互いを好きになって、ある程度つきあいが続けば当然身体の関係はできてくる。その時に彼女が彼の部屋に行くようになるか、彼が彼女の部屋に来るようになるか、それによって彼女のその後がずいぶん違ってくる。彼女の気持ちも違うだろうし、周囲の見る目も違う。将来彼女が就職するときには、その周囲の評判というのが大きく影響するかも知れない。それより何より、俺は彼女の独身主義というものがまだまだ危なっかしいものだと思っていた。だから彼女が彼を部屋に入れてしまったと知ったとき(いずれはそうなるだろうと思っていたが)彼女に手紙を書いたりした。「こっこへの手紙」がそれだ。この時点で、彼女達の関係がどこまで進んだがなどということは彼女は何も言わなかったし、俺も聞く気がなかった。子供ができたというのなら別だが、そうでないのならば彼女達がどこまで行っていようがそれは自然の成り行きだろうし、俺にはどちらでもいいことだった。
このとき彼女は最後の線で彼を拒んでいた。俺がそれを知ったのはずっと後になってからだったが、彼女は3年もの間、彼を拒み続けた。彼もよく我慢したものだと思う。何もなかったのならともかく、彼と彼女はお互いの部屋に頻繁に行き来し、当然キスもし、ぺッテイングだってかなりハードなところまで行っていた。彼女もそれを受け入れていた。ただ、彼が自分の中に入ってくる、そのことだけはどうしても嫌だったという。二十歳そこそこの男にとって、この蛇の生殺しのような状態がどれほど辛いものだったか、同じ男として俺にはよくわかる。本当に、よく我慢したものだ。
大学4年になって、二人の間に別れ話が持ち上がった。原因は、彼女が他の男を好きになったこと。二人のつきあいがマンネリになっていたのだろうか。喧嘩をしてから仲直りをするまでの過程が、すんなりとは行かなくなっていたようだ。そうした中で、彼女は卒業論文の指導をしてもらっていた研究所の助教授を好きになっていく。相手の助教授は直接の指導教官ではなかったが、卒業論文に関する研究の過程で彼女が研究所の施設を使うのに便宜を図ってくれたり、論文の中身についてもアドバイスしてくれていたらしい。
助教授がどこまで本気だったのだか。彼女を食事に誘ったり、何度かは飲みに連れていったりもしたらしいが、そこまでだったらしい。彼女の方は、その時点、でかなり熱くなっていて、彼のことは全く目に入らなくなっていた。俺にも「彼と別れたい」という相談があった。しかし、俺の方から見れば、妻子持ちの助教授が本気で相手をするとは思えなかった。酒を飲みに行ったといっても、それ以上のことは何もなかったわけだし、俺が女の子を誘って飲みに行くのと同じようなものだったのではないだろうか。彼女の方は、あの先生になら「抱かれてもいい」というようになっていたが、俺は「やめたほうがいいね」と言い続けた。
彼はこの間の事情をすべて知っていた。彼女が別れてもいいという気持ちで彼にみんな話したようだ。そして、彼は「それでもいいから、つきあいを続けたい」と言った。そんな状態が統く中で、彼とはしだいに会わなくなり、自然消滅のような形になってきた。一方で助教授の方からはその後なんの誘いもなく、やがて助教授はアメリカへ行ってしまった。助教授のアメリカ行きは前からわかっていたらしく、その期間も3ケ月ほどだということだったが、その間にこっこの熱もしだいに冷めてきて、いつのまにか、また前の彼とのつきあいが復活していた。

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Kei

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