昨日からの続きです。
昨日の日記を先に読んでください。
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こっこの初体験の相手はやはり彼だった。彼とのつきあいが復活した後、彼女がどういう気持ちでそれを許したのか、また、それがいつだったのか、俺は何も聞いていない。ただ、その経験を境に彼女の中で何かが変化したように思う。
彼との二度めのつきあいは長続きはしなかった。二人の気持ちが離れはじめていたときに助教授が現われ、助教授の存在がなくなるとともにその反動で二人の仲が戻ったかのように見えたのだが、結局は二人の距離がいつの頃からか目に見えないほどゆっくりと離れはじめていたのだろう。二人が別れるのは、いずれにしろ時間の問題だった。ただ、その間に彼女は女として男に抱かれることを覚えてしまった。別れは彼女が言いだしたことだったが、男に抱かれる暖かさがわかり始めたその時に、彼女は―人になってしまった。彼と別れた後、彼女は俺に電話をしてきては、「寂しい」と言い続けた。電話の時間も1時間以上になるのはざらで、ときには夜の11時ごろから1時過ぎまで延々と話し続けることもあった。友達と飲みに行く回数も増えた。飲んでは「帰りたくない」と言って友達に甘え、なだめられて家に帰って―人になると、そんな自分に自己嫌悪する。そんなことが続いているうちに、サークルのコンパの帰りに「ちょっと可愛いな」と思っていた後輩の男の子の部屋に上がり込み、例によって「帰りたくない」と駄々をこねた挙げ句にその男に抱かれてしまった。その男が好きだというわけでもない。相手もそうではない。それはわかっていても、部屋で―人でいるよりはいいと思って抱かれてしまう。それがよくないということは彼女自身わかっているし、だからこそ俺のところに電話をしてきては、「先生、どうしよう」という。彼女は、俺に「そんなことはするな」と言って欲しいのだ。だから、俺は電話のたびに「やめろ」と言い続けた。結局は彼女自身が決断するしかないということはわかっていたが、その時点で彼女に決断を迫るのは無理だったし、俺の方もそれ以上何もできなかった。彼女の卒業が迫ってきて、就職も決まったころ、ひとつの事件が起こった。
気の合ったサークルの仲間との飲み会で、彼女は例によって女の友達に甘えながら飲んでいた。そして、気がっくとその友達の家に帰る終電の時間が過ぎていた。しかたがないから、近くのホテルに泊まろうということになって、その場に居合わせた男女二人ずってツインルームを二部屋とった。男女別に別れて泊まる形になったのだが、「まだ飲み足りない」ということで男の部屋に4人が集まって飲みはじめた。やがてもう―人の女の子は「眠くなった」と言って自分の部屋に戻り、こっこだけが男二人と飲んでいた。相手の男達は4年間ずっとサークルで―緒だったし、気心も知れていて、あらためて男として意識したことなどはなかったという。 飲んでいるうちに、キスについての話が始まり、そのうち「キスしてみようぜ」ということになった。こっこは「嫌だ」と言ったのだが一人の男に強引にキスをされてしまった。もう一人の男は、こっこが「嫌だ」というのを聞いて躊躇していたのだが、やがてもうひとりの男に引きずられるような形でキスをしてしまった。こっこの方も、初めは本当に嫌だったのだが、「あとの方は、そんなに嫌でもなかった」と言っている。そのときは結局それ以上のことはなく、そのまま男女に別れて寝てしまった。翌日になって、彼女は彼らがどうしてあんなことをしたのか聞きたくなった。ただ「酒の上だ」だけでは済まない何かを彼女自身も感じていたのかも知れない。だが、彼らが二人でいるときにはどうしてもその話を切り出せなかった。幸い、帰りはみんな方向がばらばらで、途中までは後からキスをした男と一緒だった。
帰り道、彼女がそのことを聞いても、彼は初めはなかなか話そうとしなかった。
しかし、彼女が何度も聞くと「怒るなよ」と言って話し始めた。
彼らも彼女が部屋に戻った後、「まずかったかな」という話をしていたらしい。
その話の中で、「今日のあいつは男に抱かれたがっているみたいに見えなかったか?」という話になった。彼ら二人には、彼女が単に隙だらけだったというだけでなく、もっとはっきりと「男に抱かれたい」というサインを出しているように見えたらしい。多分それはその通りだったのだろう。こっこ自身は自覚していなくても、寂しい、暖まりたいと思っている彼女の気持ちがそういう形で表に出ていたのだろう。彼らにしてみれば、そんな形で誘っておいてキスまでしか許さないということの方が不思議だったかも知れない。このことで、彼女はとても大きなショックを受けた。別れてからこれまでの自分の姿が他人にどう写っていたのか、それがこんなにはっきりとした形で突き付けられたのだから無理もないだろう。その日の夜に俺のところに電話をしてきて、電話の向こうでさんざん泣いて、翌日には俺のところにやってきた。
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以下はまた明日。

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Kei

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