こっこという女の子 3
2001年11月14日11月12日からの続きです。
日を追って順に読んでみてください。
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泣かれても、俺にはどうすることもできない。部屋で話を聞いてたが、こういう話の時に正面から向き合っていたのではどうにもならない。だからといって、横に座ったら泣き付いてきて、やはりまともな話にならないだろう。仕方がないので、ドライブに連れだした。
車の中でも彼女はずいぶん泣いた。俺は泣きたいだけ泣かせておいた。
彼女が泣きやんだとき、車は天文台の下にいた。もう、辺りは暗くなっていて、目の下には遠くの街の明かりが見えていた。
「6ヶ月間謹慎しろ」と俺は言った。2月の末のことだった。
あと2ヶ月で彼女は就職する。そのあと4ヶ月。その間、会社のつきあいは別として、飲みに行ったり、男と話をしたり会ったりもしないで、職場と家の往復をしていろということだ。こっこは「できない」と言う。女の友達とだけ会うのではだめなのかと聞くと「わからない」という。 こっこは大学に入るまでは両親と一緒に暮らしていて、大学に入って一人で暮らすようになってまもなく、彼とつきあい始めた。だから、本当の意味で一人になったのは今度が初めてだ。それを思えば寂しいという気持ちはわかる。
しかし、ここで振りきらなければ、この後も何度も同じようなことを繰り返してしまうだろう。そういう意味で「6ヶ月の謹慎」というのは妥当な線だと思うのだが、こっこの側にまだそれを受け入れる準備が整っていない。かわいそうだがもう少し苦しんで、自分の中に「どうしても越えたい」という思いが強くなるのを待つしかないだろう。 できることならその間に、彼女がどうしてこうなってしまったのか、彼女自身が自分というものをしっかり見つめて考える時間を作ってみたい。別れて寂しいからとか、男に抱かれる暖かさを知ってしまったからとか、そんな表面的なことではなく、もっと彼女自身の内面の奥深くにあって、彼女自身のこうした行動の一番のもとになっているものを見つめて欲しい。ただ、これはとても難しいことで、精神分析の専門家でもない俺がうっかりやるわけにはいかない。―つ間違えばとんでもないことになりかねない。だから、何かきっかけがあればそちらの方向に促してみるが、それまでは間違いのないように見守っているしかないだろう。この後、彼女とは電話連絡だけで会ってはいない。電話の様子ではいくらか落ち着いてきてはいるようだ。少なくとも男のところに泊まることはなくなっている。この先どうなっていくのか、まだまだ安心はできないが、希望は出てきたといえるだろう。俺としては、これを機会に自分というものをしっかりと見つめ直して欲しいのだが、誰でも自分自身の精神世界に入り込むというのはとても苦しい作業だし、無意識のうちに見ないようにしているものと向き合うということはなかなかできない。今回のことも、こっこの気持ちが落ち着いてくるにしたがって記憶の表面からしだいに思い出という世界に埋没されて、根本原因に触れないまま終わりになってしまうのかも知れない。
それはそれで仕方がないことなのだろう。素人の俺が迂闊に彼女の精神世界に入り込むわけにはいかないし、また、それが彼女自身のためだと言いきれるわけでもない。結局最後は「彼女自身がどうするか」というところに行き者いてしまう。
これを書いている時点で、この問題は終わっていない。俺も結論を出せず、彼女も決断できていない。
男に抱かれることが、女の心と身体に大きな影響を与えるのだということは、以前から機会があるたびに言い続けているが、これなどはそれがはっきりと出た例だろう。ちょっとしたきっかけと、ほんのわずかな時間で女というものが大きく変わってしまう。男だって一人の女に夢中になったりするけれど、そういったこととは根本的に違う何かが女にはあるような気がする。もちろんそうでない女だって多いのだろうが、少なくとも自分はそうなってしまうかも知れないと思うのならば、気を付けて欲しいものだ。
日を追って順に読んでみてください。
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泣かれても、俺にはどうすることもできない。部屋で話を聞いてたが、こういう話の時に正面から向き合っていたのではどうにもならない。だからといって、横に座ったら泣き付いてきて、やはりまともな話にならないだろう。仕方がないので、ドライブに連れだした。
車の中でも彼女はずいぶん泣いた。俺は泣きたいだけ泣かせておいた。
彼女が泣きやんだとき、車は天文台の下にいた。もう、辺りは暗くなっていて、目の下には遠くの街の明かりが見えていた。
「6ヶ月間謹慎しろ」と俺は言った。2月の末のことだった。
あと2ヶ月で彼女は就職する。そのあと4ヶ月。その間、会社のつきあいは別として、飲みに行ったり、男と話をしたり会ったりもしないで、職場と家の往復をしていろということだ。こっこは「できない」と言う。女の友達とだけ会うのではだめなのかと聞くと「わからない」という。 こっこは大学に入るまでは両親と一緒に暮らしていて、大学に入って一人で暮らすようになってまもなく、彼とつきあい始めた。だから、本当の意味で一人になったのは今度が初めてだ。それを思えば寂しいという気持ちはわかる。
しかし、ここで振りきらなければ、この後も何度も同じようなことを繰り返してしまうだろう。そういう意味で「6ヶ月の謹慎」というのは妥当な線だと思うのだが、こっこの側にまだそれを受け入れる準備が整っていない。かわいそうだがもう少し苦しんで、自分の中に「どうしても越えたい」という思いが強くなるのを待つしかないだろう。 できることならその間に、彼女がどうしてこうなってしまったのか、彼女自身が自分というものをしっかり見つめて考える時間を作ってみたい。別れて寂しいからとか、男に抱かれる暖かさを知ってしまったからとか、そんな表面的なことではなく、もっと彼女自身の内面の奥深くにあって、彼女自身のこうした行動の一番のもとになっているものを見つめて欲しい。ただ、これはとても難しいことで、精神分析の専門家でもない俺がうっかりやるわけにはいかない。―つ間違えばとんでもないことになりかねない。だから、何かきっかけがあればそちらの方向に促してみるが、それまでは間違いのないように見守っているしかないだろう。この後、彼女とは電話連絡だけで会ってはいない。電話の様子ではいくらか落ち着いてきてはいるようだ。少なくとも男のところに泊まることはなくなっている。この先どうなっていくのか、まだまだ安心はできないが、希望は出てきたといえるだろう。俺としては、これを機会に自分というものをしっかりと見つめ直して欲しいのだが、誰でも自分自身の精神世界に入り込むというのはとても苦しい作業だし、無意識のうちに見ないようにしているものと向き合うということはなかなかできない。今回のことも、こっこの気持ちが落ち着いてくるにしたがって記憶の表面からしだいに思い出という世界に埋没されて、根本原因に触れないまま終わりになってしまうのかも知れない。
それはそれで仕方がないことなのだろう。素人の俺が迂闊に彼女の精神世界に入り込むわけにはいかないし、また、それが彼女自身のためだと言いきれるわけでもない。結局最後は「彼女自身がどうするか」というところに行き者いてしまう。
これを書いている時点で、この問題は終わっていない。俺も結論を出せず、彼女も決断できていない。
男に抱かれることが、女の心と身体に大きな影響を与えるのだということは、以前から機会があるたびに言い続けているが、これなどはそれがはっきりと出た例だろう。ちょっとしたきっかけと、ほんのわずかな時間で女というものが大きく変わってしまう。男だって一人の女に夢中になったりするけれど、そういったこととは根本的に違う何かが女にはあるような気がする。もちろんそうでない女だって多いのだろうが、少なくとも自分はそうなってしまうかも知れないと思うのならば、気を付けて欲しいものだ。
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